長
□恩赦
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「今ごろ・・・何してるのかな・・・」
静まり返った部屋の中。
ゴロンと横になりぼーっと天井を見上げていた。
負けた。
瀬田宗次郎は折れた刀と打撲痕だらけの体を見つめていた。
顔は無表情。
負けたのは初めてではない。
志々雄と稽古していた時は必ず負けていた。
ただ、実際に刀を持ち殺そうと向かってきた相手は確実に殺していた。
『弱肉強食』
強ければ生き残れた。弱ければ死んでいた。
あの状況下、その言葉だけが真実だった。
だが、もし。
もし、違う道があったのなら家族を殺さずにいられたのなら。
それが一番よかったのかもしれない。
「・・・・・どっちが正しいのか・・・・」
きっとどっちも正しいのだろう。
長いこと考えることを放棄していた頭は回転してくれない。
いつも自分に道を示してくれた人と決別すると誓った。
「けど・・・」
今、行われている戦いはきっと『最期』の戦いになっているだろう。
それだけは見届けたい。
あの人が死ぬほど望んでた「幕末以来の戦闘」なのだから。
「ちょっとだけなら・・・ばれないならいいか」
と、いつものような笑みを浮かべる。
剣心との戦いで『感情』が戻ってきたとはいえ、何十年と押し込んでいた感情がすぐに機能はしてくれない。
喜怒哀楽のうち「楽」と「怒」だけは戻ってきたような気がしていた。
最終決闘場に着けば、中から叫び声が聞こえた。
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