幻水 ティアクライス小説

□願い
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「だーーーっ!!!冷てぇ!!」
雪女らしい人物に会い、
いきなり大量の雪がぶつかられて
ロウは雪に埋もれかけた。

そんなに寒くないからと、いつもの服だったため
服のスキマから大量の雪が入り込んで
体温で溶けた。

「ロ、ロウ殿、大丈夫ですか!?」
モフモフローブを着たアスアドが心配そうに声をかける。

「う、うー。冷たい。 何なんだあの女? ・・っくし!!」
さすがに、寒い。冷たい。
服が濡れてしまったため、風が冷たかった。

「と、とりあえず山小屋まで行きましょう!」
アスアドは自分の着ていたローブをロウにかぶせ、
そのまま抱き上げた。

「わ、何してんだよっ!!」
よりにもよってお姫様抱っこで抱きかかえられて
ロウは慌てて降りようとする

「わ、暴れないでください! 
背負うよりこっちが楽なんですよ!!」
「だ、だからってなぁ!?」
急に抱きかかえられたら誰だってびっくりする。
(まぁ、誰もいないからいいけど・・・。)

諦めて、そのままアスアドを見上げた。
(・・・・一番もてるタイプだよ・・・。)
こういう行動とか。言動とか。

今自分を包むのは、アスアドのローブ。
少しは暖かいと思ったが、
体が冷えているせいか、まだ寒くて
身を震わせた。
「寒いですか・・・・?」

心配そうに聞かれたたが、
答えられなかった。
お前のほうが絶対寒いじゃないか。
吐く息が白かった。

風が強くなった気がする。
もうすぐ、吹雪になるのかもしれない。

寒くて体が震えるのを必死で耐えた。

さらに強い力で抱かれて
その腕と体の温かさが伝わっていた。


「いやぁ・・・扉のカギが開いていて助かりましたね。」
山小屋の中で火をたき、服を乾かした。
ロウは、小屋においてあった毛布にくるまって
火を見つめている。
(まだ、少し寒い・・・・)
風邪でも引きかけているのかもしれない。

いつのまにか、外は吹雪いていた。

「今日はここをお借りして一泊するしかなさそうですね・・・。」
窓の外を見てアスアドが言った。
「あぁ、しょーがないよな・・・。この吹雪じゃ遭難しかねない。」

小屋においてあった保存食をかじる。
ドガじーさん、誰かが遭難すると思ってたのかな・・・。
扉も開いていたし。


軽く眩暈がする・・・
本格的に、寒気がしてきた。
あの程度で、なさけないな・・・と思う。

しかし実際、そうやって体から体力が奪われていくのが分かった。

その間、アスアドは火の調整をしたり
暖かい飲み物を作ってくれたりした。

「アスアドー。」
そう言って色々と動いているアスアドを呼ぶ。
「え、何ですか?ロウ殿。」
何だか犬みたいだ、と思った。
少し、笑いをこらえながら聞く。
「なぁ、アスアドは寒くないのか?」
「えぇ、俺は平気ですが・・・。」

(・・・・・。)
そういうとおもった。
「俺は寒い・・・。」
「すいません・・・・俺がついていながら。」
思ったとおりの反応で。

「アスアド、暖めてくれないか?」
一瞬、停止。
顔がニヤけそうだ。
「・・・え、俺・・・ですか?」

ど、どうやって?
そう思っているに違いない。
・・・・しょーがねーなぁ。

「ほら、これかぶって。」
今まで被っていた毛布を
アスアドにかけて
座っているアスアドの前に潜り込んで
そのまま一緒に毛布に包まった。

「うん、あったけぇ。」
満足して、目を瞑る。
アスアドの体温が、何となく上がった気がした。

心臓の音も少し早かった。
(少し、やりすぎたか?)
それとも、驚きすぎて
またとまっているんだろうか?

(・・・・まぁ、いいか。)

暖かい。





手を、ロウの前に回してみる。

寝ているわけじゃないようだが、
嫌がる様子はなかった。

後ろから ロウの頭に顔をうずめる。

(貴方は、突然そういう事をするから・・・。)

襲い掛かりたくなるのを必死で我慢する。
嬉しいような、悲しいような・・・。

もっと強く抱きしめた。
少しずつロウの体温が感じられるようになった。

それにしても、あれは誘っているようにしか思えないのですが・・・。
そう思いつつ、勇気は無かった。
でも、今はこのままでも・・・

十分、幸せです。

ふわふわの髪の毛を
口でモフモフした。
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