幻水 ティアクライス小説

□うまく言えない
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〜ロウに怖いものはないのか?〜ロベルトの場合

「ん、何だよ? 怖いもの? そうだなー・・・これ以上誰かがいなくなる事。」
笑いながら答えるロウは
それが俺にも作り笑いだとわかるくらい
悲しそうだった。


(・・・・ミスった。)
別に傷つけようとしたわけじゃない、当然だ。
何かこう別の答えを期待していたんだが・・・

あいつがここまで落ち込んでいるとは。

普段のロウならこんな事を言わない。
まして俺に弱音を吐くような事は絶対ないだろう、
あいつはあいつなりに自分の立場を理解しているはずだった。



それが、今日は違った。
リウが言っていた意味がわかった。
あいつはロウが落ち込んでいるという事が分かってたんだ。
それで少し元気づけてやろうとしたんだが・・・・
まんまと失敗したわけだ。
くそっ、俺の馬鹿!!!


いなくなったロウを探して走る
こういうときあいつはどこに行くんだったか・・・
まさかリウのところに・・・・?
とおもって広間に行ってみたが、いなかった。
「どうしたんだよ・・・まさかお前・・・・」
「いや、なんでもないんだ、じゃあな。」


まずいな、リウにはバレただろうな。
益々何とかしなきゃいけなくなった!


屋上、木の上。
ツァウベルンがよくここにロウが来る・・と言っていた気がする。
・・・・いた。

「・・・・・・・。」
後ろ姿でさえ、いつもより落ち込んでいるのがわかってしまった。
(どう考えても俺のせいか・・・・)
どうやって声をかけたものか・・・・と考え込んでいると、

「・・・・ロベルト、何してんだよそんなところで。」
先にロウに気づかれた。
すでにこっちを向いている。
「いや・・・・・悪かった。ごめん。」
何も思いつかなくて、ただ謝るしかなかった。
もっと気をつかった言葉はでてこないのか俺は!

「・・・・・ぷっ・・・くくく・・・。」

我慢していたのに耐え切れなかった、という感じでロウが吹き出した。

「な、何だよ!?」

せっかくあやまったのに、何で笑われなきゃいけない!?

「悪ぃ・・・・お前が謝るのとか珍しすぎて・・・っだめだ可笑しい。」

何がそんなに可笑しいんだ!と言いたいくらい、しばらく笑い続け、
ようやくおちついたロウは俺の目を見て言った

「ありがとな、ロベルト。俺を励まそうとしてたんだろ?」

ロウの笑顔には少し元気が戻っていた。

「・・・・べ、別に、お前のためじゃなくて・・・・!」

「あーはいはい、分かってるって! やっぱロベルトはそうでないとなぁ。」

「お前が元気ないと、皆が心配するんだよ・・・。」

「悪かった悪かった。大丈夫、何かふっきれたから!」

よかった、これでリウに怒られずにすむ・・・
そうほっとしたのもつかの間

「にしても、あのロベルトが・・・くくくっ・・・リウにも話してやろっと!」

そう言って俺の横を通り過ぎた。

「な・・・・! あ、おいっ!待てよ!!!」

その言葉に反応してかは分からないが、ロウが振向いて、

「ロベルト、ありがとうな!!! うれしかった!」

そう言ってまた走っていってしまった。
不意打ちすぎる・・・・!!!
くっ、何で俺はこんな事で照れなきゃならないんだ!
分かっていてやっているのならともかく、だ。

はぁ、この後リウと一緒に大笑いされるのか・・・と思うと憂鬱な気分になる。
さらに恥ずかしい事になるのは目に見えていた。

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