幻水 ティアクライス小説

□アスアドとホウキ
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アスアドとホウキ


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その日、俺はロウ殿から呼び出されて
団長の部屋に向かっていた。
何の話だろう・・・・。
たとえどんな話であっても、
俺が役に立てればいいのだが・・・。


「失礼します、ロウ殿。
一体どうしたのですか?」

「あ、アスアド!待ってた。」

ロウ殿がこちらを振り向いて言う。
その手にはなぜかホウキがあった。

「ロウ殿・・・それは?」
(掃除でもするのだろうか、俺に手伝えって事だろうか。)

そう考えていた。

「お、さすがアスアド!!よく気づいたな〜。
これさっきゼノアさんにお礼としてもらったんだけど、
アスアドに装備してもらおうかとおもってさー!。」

(・・・・・装備・・?)

「え、いやそれはホウキ・・・・ですよね?」
「ホウキだけど。」
(ロウ殿は本気で言っているのだろうか?
本来ホウキは掃除に使う道具ではなかったか。
いや、もしかしたらホウキが魔力を持つということも
ありえなくはない・・・・かもしれないがいやしかし。)

「普通ホウキは掃除に使うものでは・・・・?」
聞いてしまった。

「・・・・は?アスアド何いってんだよー
ホウキっつったら武器の中でも有名な魔法杖だろー?。
・・・それとも、帝都にはなかったのか?」

(あくまで・・・・掃除道具としてはみた事も使った事もあるのですが・・・)
「え、えぇ・・・・その武器は初めて見ました。」

「そっかー、じゃあ知らなくても当然か・・・ごめんアスアド。
でもホウキっていったら有名なのに、結構希少なんだ。
実は俺も初めてみた!」

すごいだろー、といってホウキを渡された。


「・・・は、はい・・・・。」
それはどう見てもほうきだった。


装備させられた後、部屋を出た。
そこにはクロデキルド様が立っていた。

「む、アスアドか。どうしたんだそのホウキは?」
「あ、えぇ・・・ロウ殿に渡されたのですが・・・
これで掃除でもしろ、という事なのでしょうか?」
クロデキルド様も、ホウキは掃除に使うものだと思いませんか?と尋ねた。

「・・・・アスアド、大丈夫か?
ホウキといったら魔法杖と決まっているだろう!」

「・・・・・え・・?」

私を馬鹿にしているのか?
と。

あぁ、俺の馬鹿!
ホウキは杖なんだ、武器なんだ!
クロデキルド様を怒らせるような事をしてしまうなんて・・!!!


と、目の前が真っ暗になったような気分だった。


そして、
暗転。



「・・・・・・・はっ!!!」


目が覚めたのは、自分の部屋。
眩しい朝日が差し込んでいた。


「今のは・・・・夢?」

夢、だったのか。

安心しすぎて、体の力が抜けてしまった。
あぁ、夢でよかった・・・・!


しばらくして、ノックの音が聞こえた。
「おーい、アスアド、起きてるかー?」
どうやらロウ殿のようだ。
「あ、はい、大丈夫ですが。」

そう答えると、ロウ殿はドアを開けて入ってきた。
「なぁなぁ、アスアド!これちょっと見てみろよ!」

そういって渡されたのは。

「・・・・ホウキ、ですね。」

まさか、と思う。

「ホウキ、だな。ちょっと触ってみてくれないか?」

そういってこちらにホウキを差し出した。
それを受け取ると。

「こ、これは・・・・・。ただのホウキではありませんね。」
魔力が、宿っているのが分かる。
俺が今使っている杖と同等、もしくはそれ以上の魔法の力。
これは、杖なのか。

「ゼノアがくれたんだけど、まさか掃除しろって言ってるのかと思ってびっくりしたんだ。
でも触ってみたら何か魔力みたいなのががあってさ。」

それで俺に確かめてもらおうと思った、のだろう。
ロウ殿は嬉しそうだった。

「これは確かに、強力な魔力が宿っているのを感じます。」
「そっかー、やっぱ武器なのか・・・・。」

そういってロウ殿は少し考え込む。

「んー、よし。じゃあアスアドそれ装備してくれるか?」
「え、俺でいいんですか?」

これは見た目はホウキだが、かなり貴重な武器だ。
それを簡単に俺に渡していいのだろうか、と思ったのだ

「うん、いいっていいって! 何か似合うしさ!」
「・・・・似合いますか・・・。」
「うん、似合う。」

まぁそこまで言うのなら・・・
ということでもらう事にした。

「まぁ、アスアドなら元々魔力あるし、役に立つだろ?」
「えぇ、俺には十分すぎるくらいです。ありがとうございます。」

ロウ殿は満足そうに部屋を出て行ったのだった。






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「ふむ。ロウ殿が似合うと言った意味、わからなくもないな。」
「えぇ。確かに似合うと思いますわ。」

次の日、クロデキルド様とフレデグンド様にそう言われた。
「に、似合いますかね・・・。」
「あぁ、私はそう思うぞ。」
「・・・・・・・ありがとうございます。 俺・・・・頑張ります・・!」

その日から、アスアドはホウキを手放す事はなかった。









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似合いすぎです・・・・

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