幻水 ティアクライス小説

我慢しない日
1ページ/1ページ





ディルクはもうこの世界にいない。

ずっと一緒だったと思ってたのに

必ず助けようと思ってたのに

結局最後はディルクに助けられて。

でも、死んで欲しくなんかなかった。

もっと、一緒にいたかったんだ。

「ディルク・・・・・・・。」

(馬鹿野郎・・・・)

あの後、思いっきり泣いた。

立ち上がる力も沸いて来なかった。

気付いた時には、
リウとジェイルに支えられて部屋に戻っていた。

(あぁ、しっかりしろよ俺。)

ディルクがかせいだ時間を無駄にしたくない。
無駄にしちゃいけないんだ。






その夜は眠れなかった。
今までの事が頭に浮かんでは消えていった。


良い事も。悪い事も。


浮かんでは消え、浮かんでは・・・・


自然と涙があふれた。

こんなに泣いた日は本当に久し振りだと思った。


本当に、久し振りだ。


「ロウ・・・・ちょっと入るよ。」

リウの声がした。

あまりこの顔は見られたくなかったけど。

「あ・・・・あぁ。」

リウは俺よりしっかりして見えた。
もう、覚悟をしていたんだろうか。





「ロウ、久し振りに泣いてたな。」
「・・・・・・・・・・・・・あぁ。」
「何年ぶりくらいかな、ロウの泣いてるの。」
「さぁ、もう覚えて・・・・ないかな。」

ぼそぼそと答えるロウの声には、
まだ覇気がない。

どうしたらロウを元気づける事ができるんだろう。

勇気を出してきてみたはいいんだけど・・・・。

「・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・。」


沈黙。

今日はいつもより空気が冷たく感じた。






「なぁロウ、兄貴に最初に攻撃当てたの、いつだっけ。」
「・・・・・・・・・。」
(いつだったか。いくら4人で挑んでも、全然だめだった。)


「意外と早かったんだよなー、俺達が戦いの練習始めてからさ。」
「・・・・・・あぁ。」
(毎日のように練習してたもんな。)


「俺は・・・・あんま役に立ってなかったけど。」
「・・・・・・・・あぁ。」
(リウは元々体力無かったな。)


「ロウは飲み込み早かったって兄貴が言ってた。
 ジェイルのほうが早く練習してたけど・・・・。すぐ追いついたし。」
「・・・・・・・そうか?」
(ジェイルも筋がいいからなぁ、あの家族は・・・)


「あぁ。ジェイルもすっげー悔しがっててさ、意外と負けず嫌いなんだよな。」
「・・・・・・母親ゆずりだしな。」

(・・・・・・また泣けてきた。)

「・・・・・・・。」
「・・・・・リウ、俺を泣かせに来たのか?」

村の事を思い出せば、
必ずディルクの事が思い浮かんだ。

「・・・・・っ・・・。」
あれだけ涙を流したのに。
またあふれて来て、とまらなかった。


「今日くらい、我慢しないで泣いちゃえよ。」
我慢、なんて、できなかった。

「リウ・・・・リウ・・・・っ・・・。」


ここには分かってくれる人がいる。


「うっ、うわああああああ・・・。」
思い切り、泣いた。






「・・・・・・・・・・・。」
泣いている間、ずっとリウは俺を抱きしめていた。
どうやら用意をしてきたようで、その手にはタオルがあった。
もうびしょびしょだけど。

「・・・・・・・・・・・。」
泣いた。一生分くらい泣いた。

俺の分だけじゃなく、4人分くらい泣いた気がする。
悲しみも、一緒に流れてくれた。


「この悲しみも、忘れちゃいけないんだな。」
俺達が生きている間、ずっと。
「もう、辛くないだろ? あれだけ泣いたんだから。」
泣いてばかりいられないもんな。
「ほら、もう、無駄にするなよ。」
涙を。
ディルクがくれた、時間を。

「ありがとう、リウ。傍にいてくれて。」
「本当なら、二人を仲直りさせたかったけど・・・。
 俺にできるのは、もうこのくらいだから。」
「大丈夫、リウのせいでもないんだから・・・。」

思っていたより、リウは強いと思った。
書をついだ後くらいから、その覚悟は大きくなったように思う。


後悔している暇があったら、先に進まないと。

ディルクだけじゃなく、クーガにも怒られるから。



目を閉じたら、眠気が襲ってきて
リウの腕を枕代わりにして眠ってしまった。

次の日のリウは腕が筋肉痛だった。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ