幻水 ティアクライス小説

□時には覚悟も必要
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「ロウ、ちょっと話がある。」

そう言ってロベルトが俺を呼び止めた。

「話って、何だ?」

いつものように訓練に付き合えとか
そう言われるのかと思ったが、
今日は違っていた。


「いいから。俺について来い。」

そう言ってどんどん歩いて行ってしまうので
急いで追いかけた。

「何なんだよ、全く。」

今日のロベルトは、どこか変だ。
行動が読めない。


連れて行かれたのは、屋上だった。

誰もいない事が多いので、
昼寝場所に好都合なんだよな、と
いつもロウはそこで寝ていたりした。

今日も、誰もいない。
静かだった。


「・・・で、話って、何だよ?」

ロベルトは背を向けていた。

何だろう、緊張でもしてるのかな。

別に高い所が苦手ってわけでもないはずだけど・・・。

「なぁ、ロウ。」

いい加減、こっちを向いて話せばいいのに。
ロベルトは、後ろを向いたまま。

「俺と、勝負してくれないか。」

「え? 別にいいけど・・・・。」

急に何を言い出すのかと思えば。

(そんなに俺と勝負したかったのか?)

別に言ってくれればいつでも勝負くらいするのに。


「・・・・・・・。そうか、ありがとう。」

振り向いたロベルトは
真剣だった。

「−−−−。」

その、雰囲気に 俺も息を呑んだ。

本気で 行く。

そういう目だった。

だったら俺も。

「手加減、しねーからな。」
「あぁ。そうでなくては困る。」



「行くぞっ。」
素早い踏み込み。
冥夜の騎士団の特徴。
これをかわせなければ、負ける。
「−−−っ。」
さすがに、早い。
ギリギリの所で避け、そのまま、振り返る。
間をおかずに攻め込む、が
それも剣で弾かれる。
(重っ・・・。)

体力の差か。
弾かれたときの衝撃が思ったよりヤバイ。

その瞬間、次が来た。
(短剣かっ・・・・。)

流れるように、剣が弾かれて、手が麻痺する感覚。

(やばっ・・・)
そう思った時には勝負がついていた。

ナイフで弾かれた剣は、床に音を立てて落ちて

顔の先に、剣が突き出されていた。

(・・・・・・・負けた、な。)


「俺の勝ちだな。」

ロベルトは、もう笑っていた。

「あぁ、俺の負けだ。」

嬉しそうなロベルトを見て
一気に力が抜けてしまった。







「俺、お前の事が好きなんだ。」

「あぁ、知ってる。」

勝負した後・・・

(勝ったら俺は告白する・・・!)

そう覚悟を決めていたらしいが、

案外あっさり返されてびっくりしているようだ。

「・・・・・・何で。」

「俺もお前が好きだから。」

そう言ってやった。

なんて間の抜けた顔だろう。
勝負には負けたが、
何となく勝った気分だ。

「なっ・・・・。」

そうやってすぐ赤くなるところとか。
それを必死でごまかそうとするところとか。


「・・・・・・さすがに、言えなかったけどさ。」

だから、お前から言ってくれて嬉しいんだ、俺。

「ロウ・・・・・。」

あぁ、そんな嬉しそうな顔するんじゃねーよ。
こっちが恥ずかしい・・・。


そのまま
ぎゅっと抱きしめられた。

(少し・・・・苦しいけど。)

お前も、そんなに必死なんだって事がわかって。

(すげー、嬉しい・・・・。)

負けないくらい、強く抱き返した。




抱きしめられていた腕が緩まれて
顔を上げると 目の前にロベルトの顔があった。

(ち、近・・・・!)
「っ・・ロベ・・・。」

抗議の声を上げようとしたが
口を塞がれて、止めた。


・・・身長の差が憎い。

背中を支えられて、
どんどん深くなっていくキスに
体の力が抜けた。





ロベルトは、そのまま襲いたくなる衝動を必死で我慢していた。
(可愛い過ぎる、だろ・・・・。)

何もかも始めて見る表情だった。

ずっと悩んでたが、今日言えてよかった。

(妄想・・・していたよりずっと、やばい。)


嬉しくて・・・・自重できそうに、ないな・・・。





キスは、ロウが苦しすぎて怒るまで、続いた。
「苦しいって言ってるだろ馬鹿!!!」
その怒る顔ですら 甘い。


















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作者吐血。

げほんごほん。

俺について来い! 
ってロベルトに言わせよう!
とおもって書きました。

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