幻水 ティアクライス小説
□頼みごと。
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「あ、ルバイス! ちょっと頼みがあるんだけどさー。」
「はい、なんでしょう?」
貴方に頼みごとをされるたびに
その結果を報告した時の満足感が思い出される。
「えぇ、承知しました。
では、大船に乗った気でいてくださいね。」
いつもどおりに、仕事を頼まれて
出発する時に
後ろから手を振るあの人を見て
(十分すぎるくらい、ですねぇ・・・。)
仕事として充実しすぎていると思える
今までと比べたら。
今までの仕事と殆ど同じような事をしているが、
前と少し変わった事があった。
「あ、すいません。これ一つ包んで頂けますか。」
行く先々の町で、何か土産になるようなものを探して
あの人に持っていくのが。
大抵はお菓子であったり食べ物であったりするので
すぐ無くなってしまうのですが。
まぁ、あの人には宝石やら何やらより
笑顔をプレゼントするのが一番似合うでしょうね。
そんなことを思う自分が可笑しかった。
変わりましたね、自分も。
あの人に出会ってから、変わったものは
とても大きかった。
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「お、おかえりー!!」
ルバイスが帰って来たのを発見して近づく。
「いつも悪いなぁ、仕事ばっかりさせちまって。」
「いいえ、十分楽しませてもらっていますよ。」
「そう言ってもらえると、助かるんだけどさ。」
情報収集は大変な仕事だ、と
誰かが言っていたように思う。
かなりの人とのつながりが必要だ。
それを、ルバイスはいつも簡単にやってしまう。
それに助けられているのは自分達だ。
感謝してもしきれないくらいだった。
「あ、そうそう、お土産を持ってきました。」
「お、今度は何?」
それももう一つの楽しみで。
いつも何かを買ってきてくれるところが
几帳面というか、何というか。
「まぁ今回は近場でしたので、大した物ではないのですが・・・・
トリュフと言うチョコレートのお菓子だそうですよ。」
「と・・・?トリュ? 何かおいしそうな名前だな。」
鳥みたいな。
「鳥の名前とかではありませんがね。お菓子ですし・・・。」
違うよな、そりゃ。
ごそごそと空けてみると、
まるっこいチョコレートのような物が入っていた。
「あまり日持ちはしないようなので、早めに食べてくださいね。」
「あぁ、いつも悪いな。ありがとう。」
では、私はこれで。
そう言ってルバイスは立ち去る。
うーん、何かおいしそうだぞ。
「部屋に持って帰って食べよっと。」
この城には美味しい物があると寄ってくる奴がたくさんいるからなー。
あいつらに食べられないようにしねーと・・・。
チョコレートのお菓子を見ながら。
甘い香りがした。