幻水 ティアクライス小説

ホワイトデーの過ごし方
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「あ、アスアドっ。」

目の前を走り抜けたロウが、急ブレーキでとまる。

「どうしたんですか? そんなに急いで・・・。」

その手には白い袋。

「今前にもらったチョコレートのお礼を配ってるんだ。」

ほら、これクッキー。

そういって袋の中を見せてくれた。

どうやらまだ配る人がいるようで、まだいくつも残っている。

「・・・大変ですね。」

大変だとおもったのはその量。

(どれだけ前にチョコレートを貰ったんだろう・・・。)

思い出せば、すごい量だった気がする。

あれを全部食べたんだろうか。

(そういえばジェイル殿が何かチェックしていたっけ。)

思い出しながら。

「そーなんだよー。もうジェイルがしつこくてさー!」

大変なんだよ、とロウが呟いた。

量ではないんですね・・・。

「ジェイル殿ですか?」

「もう、あいつも過保護すぎっていうかさ・・・。俺が渡そうとすると妨害するんだよ。」

今は何とか撒いてきたけど。

「なるほど、それで走っていたのですか。」

「じゃあ俺残りくばってくるから、待っててくれよ。」

それじゃまた後で!!!

(・・・・また後で?)

俺にはそのクッキー、くれないんですか。

そう思った時にはもうロウは見えなくなっていた。





その日の夜。

「アスアド、いるか?」

誰かに見つからないようにしているのか、
こっそりとロウが俺の部屋にやってきた。


「はー。やっと最後だ。」

そう言っているロウの手には、クッキーがあった。

手作りの。

「ちょっと不細工になっちまったけど・・・・。」

「ロウ殿の、手作りですか。」

思わず顔がにやけた。嬉しくて。

「ま、まぁな。」

「ありがたく、頂きますよ。」

受け取って、食べてみる。

「どうだ?」

(甘い。)

「おいしいですよ。とても。」

そりゃぁ、好きな人の手作りなんだから。おいしいにきまっている。

「・・・・ついでにキスもつけてやろうか?」

「・・・・是非。俺も、男ですから。」

むしろ俺が奪いますよ。

目を瞑るロウに、口づけをする。

「ん・・・・甘い。」

そういって嬉しそうに笑うロウを見て

「・・・このまま、食べてもいいですか。」

「え、何を?」

それは、もちろん

「貴方を。」




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