贈/宝

扉一枚の差
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らさきさんの主人公、ハルの名前で作成。

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「ハル。」
部屋に篭ってしまったあいつの名前を呼ぶ。

扉一枚の隔たりなのに、とても厚いものに感じた。

きちんと聞こえているのか不安になったが、
ここは鍵がついてないからきっとハルが抑えているんだろう。

本当はすぐ近くにいるんだ。

「おい、ハル。 何・・・・怒ってるんだよ。」

もとはと言えば自分のした事が原因だったが
こんなに怒るとは思ってなくて。

返事は、なかった。

(はぁ。)

ため息をつき、扉に額を当てる
ハルの声を、聞き逃さないように。

そこに、いるんだろ。
なんとか、言えよ・・・。

「ハル。」

名前を呼ぶ。
何度も。

それでも返事がなくて
少し、イライラして。

「おい、ハル。いい加減に・・・・。」
「いい加減にするのはそっちの方だ、ロベルト。」

急に返事が返ってきて、驚く。
強い言い方。
どうやらまだ怒っているようだ。

「・・・名前を呼ぶな。うるさい。迷惑だ。馬鹿野郎。」

それだけ言って、静かになった。


いつも、お前に中々気持ちが伝わらなくて。
もっと別の事が言いたいのに、言えない。
・・・それは、相手がお前だからなんだけど。

(くそっ、もっと冷静になれ、俺・・・。)
自分でもびっくりするくらい、焦っていて。
ちゃんと、分かるように伝えなければ。

深呼吸をする。

「おい、ハル・・・。聞けよ。」
「何だ、まだ居たのか。帰れよ。」

・・・そんな事言っても、無駄だぞ、ハル。
「ハル。」

名前を呼ぶ。
俺の好きな響きの名前。
愛しくてしょうがない
大切な人の名前。

「ハル。俺が、悪かった。 だから・・・。」

小さな声で、呟く。

ここを空けてくれ。
頼むから。
お前の顔が、見たい。
いつもみたいに、笑っている顔がみたい。
なぁ、ハル。

「開けろよ・・・。」

(だめ、か?)

「煩い、ロベルト。謝るくらいならっ・・・。
最初から・・・言うんじゃねぇよ・・・・。」

ハルの声は、少し掠れていて。

「泣いてんのか。」
「うるせー、誰のせいだ。」

やっぱり、泣いてるのか。

「ごめん、ハル。ごめん。」
「ばかやろー・・・・・。止まらねーじゃねーか。
 ・・っ・・せきにん、とれよ。」


ドアを押してみると、開いた。
目の前に、目が赤くなったハルがいた。

ムリヤリ、笑って。

「はは、お前だって、泣きそうな顔じゃねーかよ。」

そんなハルを、抱きしめる。
強く。

「悪かった。もう、二度としない。」
「当たり前だ。馬鹿・・・。」

肩の辺りが、ハルの涙で濡れた。

(何度も馬鹿って言いやがって。)

可愛い、愛しいヒト。


ハルが泣き止むまで、ロベルトはずっとそうしていた。




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ハルっていう響きが好きです。
らさきさんの小説の中のハルって呼ぶロベルトがなんかもう好きです。

誕生日おめでとうございます!
そして相互もありがとうございましたー!!!(叫

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