幻水 ティアクライス小説2

遠距離より近距離がいい
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戦いが終って

皆はそれぞれの帰るべき場所へ帰っていく

城に残る奴もいたけど

アストラシアの奴らは全員帰るって聞いた。

「そっか、かえんのか・・・・。」

そりゃそうだよな、うん。

アストラシアの専属の騎士なんだから。

「あぁ・・・。寂しくなるが、また会いに来る。」

クロデキルドはそう言ってくれた。

「へへっ、まぁ会いたかったらいつでも会いに来いよなっ。」

俺はいつでもここにいるとおもうから。

別れを惜しむクロデキルドの後ろにいるロベルトは、何も言わなかった。

(なんだよ、あいさつもないのかよ。)

なんでこんなに、悲しいんだろうな、俺

いつもなら、

『俺は寂しくなんかないんだからなっ。』

とか言うくせに。

今日だけ、言わないなんてさ。

(ずるいよ、ロベルト)

こんなの、俺が寂しいみたいじゃねーか



・・・・いや、俺は寂しいんだ。

もっとずっと、一緒にいたいのに

帰ってしまう。あいつは。


クロデキルド達が後ろを向いて歩き出すと

ロベルトやメルヴィス達もそれについて歩き出した。

俺はその背中を見つめる事しかできなかった。

声をかける余裕なんてなかった

「・・・・・馬鹿ロベルト。」

そう呟くのが精一杯なんだ。今の俺は。

雨なんて降ってないのに、顔に水が流れた。

それが口に触れて気付く

これは雨じゃなくて、自分の






「はぁ。」

自分の机に積み上げられた書類に、ため息をついた

リウも、一度スクライブの村に帰ってしまったから暫くは帰ってこないだろう。

(これ全部俺で片付けろってか・・・。)

うー、めんどくせー。

いっそのことここから暫く逃げ出してしまおうか。

・・・・・いや、ダメだな。それじゃ他の奴に迷惑がかかるだけだ。

せめて誰か手伝ってくれよー。

なんでこういうときだけジェイルとかマリカがいねーんだよー。

ぶつぶつ嘆きながら、書類を整理する。

もくもくと


『手伝ってやろうか。』


前に、めずらしくロベルトが手伝ってくれた事があったのを思い出す。

『なんだよロベルト、珍しいな・・・。雨でも降るんじゃねーか、明日。』

『・・・・別に手伝って欲しくないならいい。じゃあな。』

そうやってすぐに部屋を出て行こうとするロベルトをあわてて呼び止めて

二人で一生懸命書類を整理した。

・・・・結局夜までかかったけど。


(・・・・・今は、俺しかいないんだ・・・。)

ロベルトは今はアストラシアにいる。

もう、いつでも会える事はない

「会いたい・・・な・・・。」

でも今はそんな我侭を言っている場合でもなくて。

「・・・・。」

なんで、こういう時に思い出しちゃうんだよ、俺。

一度思い出したら、止まらなくなった。

ロベルト、ロベルト。

くっそー、こんなに好きだとは思ってなかった。

ちょっとくらい遠くても、我慢できると思ってたのに。

とても遠く感じる。

会いたい気持ちは、それに反比例して大きくなるのに。

ぐるぐるぐるぐる

ロベルトの事ばかり考えて、頭が回転してくれない。

「おわんねぇー・・・。」

机に突っ伏していると、人の気配がした。

書類で向こう側が見えなくて、誰なのか分からない。

「手伝ってやろうか?」

その声を聞いて、俺は慌てて椅子から立ち上がる。

あぁ、この声。

「ロ、ロベルトっ!?」

「・・・・なんだよ、何そんなに驚いて・・・・。」

そのままロベルトに抱きついてやる

ぐえ、 という声が聞こえたが、気にしない。

「何で、ここにいるんだよロベルト。」

ロベルトに顔を突っ込んだままで聞いてみる。

またすぐ、帰っちゃうのか?

「・・・お前専属の騎士になってやる。」

「・・・・・・は?」

え、今なんて言った? もっかい言ってくれ。

がばっと顔を上げて、ロベルトの顔を見る。

あぁ、すっげー真っ赤だロベルト。

「だーかーらー。俺は暫くここにいるって言ってんだろ!!!」

「なんだよ、ロベルト。寂しかったのか? 俺に会えなくて。」

なんだかすごく嬉しくて

それをごまかして笑った

「んなっ・・・・お、俺はお前が寂しがってるんじゃないかと思って・・・・!!!」

「あぁ、うん。寂しかった。」

だって今、こんなに嬉しい。

もう一度 ロベルトの腹に顔をうずめた。


俺の髪の毛に、ロベルトの手が触れる。

くすぐったかった。


「おい・・・・仕事。終らないんだろ?」

「・・・・もうちょっとこうしてて。」

「全く、何なんだお前は・・・・。」

今ロベルト成分を補充してんの!

そしたらきっと、やる気もでるからさ。

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