幻水 ティアクライス小説2
□立ち上がって、さぁ、走れ
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ディルクが持っていた、果物が床に落ちる。
それと同時に、周りが段々暗くなっていく。
あぁ、これは
「 」
声はもう聞こえない。俺はここにいてはいけないのだ。
逃げろ
逃げろ
偽者の現実から
走れ
走れ
後ろを振り向くな
あれは本当じゃない
あれは本当の彼じゃない。
走っていたら、声が聞こえなくなった
まだ、優しかった頃の、ディルクの声が。
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「・・・・夢・・・。」
目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。
こんな夢を見るなんて、自分もそうとうどうかしている
それだけ疲れているのかといえばそうでもなくて。
(それだけ・・・大きかったんだよ・・・。)
心の溝は深く、深く、奥が見えない気がする。
それを埋められる日がいつか来るのだろうか、と今は人事のようだった。
「あれ、ロウ起きてるの?めずらしいじゃん。」
ロウを起こしに来たリウがそういいながら部屋にはいってくる
少し暗いロウの顔を見て、リウが怪訝な顔をした。
「何、何か変な夢でも見た?」
「ん。へーき。」
そう言って大きく背伸びをする
「俺は今ここにいるから。」
リウに笑いかける笑顔はいつもの笑顔で、リウはほっとしたように息をはいた。
「そっか。・・・とりあえず、朝飯食べにいこうぜ?」
「あぁ、何か今日すげー腹減ったー。」
もぞもぞと服を着替えて、いつもどおり。
大丈夫、少しずつ埋まっているから。