幻水 ティアクライス小説2

これが恋か。
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いつからか、俺はその背中を授業中に見るようになった。

シャバックの席が俺の前の位置になったからだけじゃなくて

俺自身がいつのまにかシャバックを見るようになった。

(・・・・眠そう。)

後ろからうとうとしているシャバックを見つめる

いつもなら鉛筆でつついてやるところだ。

(・・・・なんだろうなぁ、これ。)

心臓の奥にちくちくとうずくようなこの感覚。

シャバックの事を考えると何だかうずうずする。

シャバックと話していると、何だかすごく嬉しい。

他にも色々あった。

(・・・・ほんと、いつからだっけなぁ・・・。)

シャバックと俺が仲良くなったのは、以外と最近だった。

シャバックのほうは俺の事を知っていたみたいだったけれど、俺はあの時が初対面だった。

『あ、あんたが噂のロウ・・・君だっけ?』

『何の噂かしらねーけど・・・君とかいらねぇぞ?』

クラス替えをして、偶然同じクラスになった。

それからだ。何だかんだで俺達は気が合って、仲良くなった。


(うーん・・・・。)

前でうとうとするシャバックの体に隠れて、俺は机に突っ伏した。

この先生の授業なら別に平気だろう。



今日は放課後何をしようか。

シャバックとどこかに遊びにいこうか。


そんな事を考えていたら、いつのまにか授業が終っていた。




「ロウ、ロウってば、おい!」

「んー・・・何・・・?」

「何、じゃないよ、もう授業終ったぞ。 帰ろうぜ。」

シャバックがロウに声をかける

どうやらいつのまにか眠っていたらしかった。

「・・・・ふぁー・・・・・。っしゃ、かえるか。」

大きく背伸びをして、ロウが席を立ち上がる。

周りの生徒達は既に帰っていて、教室にはロウとシャバックしかいなかった。

「なぁ、ロウ。」

「ん、何?」

その様子を見ていたシャバックが、思い切った様子でロウに声をかける。

「オレさ、お前の事好きかもしれない。」

「・・・・俺もシャバックの事好きだけど。」

ロウはおもわずそう返した。

何を突然言い出すのかと、ちょっと笑った。

けれど、シャバックの眼はいつになく真剣で、その空気にロウは飲まれる。

よく、分からない。

「そういうのじゃなくて・・・・。」

「・・・・どういうのだよ。」

そういうのじゃないなら、何なんだ?

それは自分自身にも問うように、ロウはシャバックに問いかける。

いつのまにか、ロウの心臓の音は早くなっていた。

頭の中が、からからと空回りしている。

「だから、えーっと・・・。いつも一緒に居たい・・・っていうかさ。」

「・・・いつも一緒に居るだろ?」

「〜〜〜〜っ、そうじゃなくって!」

シャバックは一度大きくため息をついて、一度ロウを見つめた。

ロウと眼があう。やっぱ、綺麗だなと思った。

そっと、ロウの顔に手をそえて、その顔に自分の顔を近づけた。

ちょっとづつ近づけると、少しずつロウの顔が紅くなっていく様子がわかった。

でも、ロウは逃げなかった。


軽く、触れるだけのキスをする。


「・・・・こういう・・・事、なんだけど・・・。」

「・・・・・・。」

ロウは一瞬考え込んで、

「・・・えーと・・・?」

でもまだわからなくて、シャバックに逆に問いかける。

あぁ、こうなるかもしれないとは思っていたんだけど、とシャバックは少し笑って、

「・・・・嫌・・・じゃなかった?」

そうロウに問いかけた。

「・・・あぁ、嫌ではなかったな。」

それを聞いて、シャバックは嬉しそうに笑った。

ロウが今までみた中で、一番嬉しそうだと思った。

「そっか、ならいいや!」

くるりとロウに背中を向けて

「帰ろうぜ?」

もう一度ロウのほうに顔だけ振り向いて言った。

「あぁ。」

ロウはそれに笑いかけながらついていく。


シャバックが手を差し出したから、ロウはその手を掴んだ。

引っ張られながら歩いて、ようやく気付く。

(・・・あぁ、これが恋ってやつ?)

シャバックはこっちを振り向かない。ずっと前を向いてロウを引っ張りながら歩いている。

それを見て思った。シャバックも恥ずかしいんだろう、と。


(なんだ。俺、ずっとそうだったのか。)

胸のちくちくした痛みはどこかにいってしまった。

かわりにうずうずするものがさっきから胸のあたりにずっとあった。

キスをされたからだろうか。

(・・・そっか、これが恋か。)

心の中でもう一度呟いて、

思いっきり、走り出した。今度はロウがシャバックを引っ張る。

「なぁシャバック、今日はどうしようか?」

寝ている時に考えていた事を色々と話ながら、二人は走って帰った。


(後で誰かに教えてやろっと。)

夕方の空が綺麗だ。





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高校生に戻りたいなぁと常々思う日々。

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