幻水 ティアクライス小説2
□こんなに近くで
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(もっとロウに近づきたい。)
そう思ったのはいつ頃だったか。
ロベルトとロウが付き合いだして、数ヶ月。まだキスも巧くできていない二人だった。
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部屋にロウがいないとき、大体いるのはいつもの場所だとロベルトは知っていた。
ロベルトは、屋上へと足を向かわせる。
そこで、屋上のベンチの上に横になって、ロウが寝ているのを発見。見事に大爆睡だ。
よくこんな場所で寝れるよな、と前に聞いた事があった。
ロウ曰く、
「外で寝るのは気持ちがいい。」
のだそうだ。
いつもの鎧を着てないロウは、腹のあたりがめくれて腰のラインが見えていた。
はぁ、とため息をつきながら服をかけてやる。起こさないように、そっと。
いつもなら、近くに誰かが来ると起きるロウだったが、今日はめずらしく起きなかった。
察するに、リウに溜め込んでいた仕事をやらされたんじゃないかとおもう。
しばらく執務室から悲鳴が聞こえていた。
そればっかりは、俺にもどうする事もできないけれど、
ロウの気持ちよさそうな寝顔に、
「お疲れ。」
と声をかけて、そっと唇にキスをする。
まだキスをするのにも一々照れるくらいの関係で、中々『先』には進めないけれど。
風が優しくロウの髪を撫でるのを見て、ロベルトは屋上から立ち去った。
ロベルトの、当初の目的は果たしたのだった。
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ロベルトが、立ち去った後、
「・・・・・・ぷはっ。」
息を止めていたロウが、大きく空気を吸い込んだ。
まだ心臓がばくばくいっている。
(ばれてなかったみたいだけど・・・!)
実は、ロベルトが来た時にロウは気付いていたのだった。
そのまま、気付かないフリをしていたら、ロベルトがいきなりキスなんてするもんだから。
「・・・び・・・っくりしたぁ・・・。」
自分の顔に手を当ててみる。頬のあたりが少し熱く火照っていた。
(今のは、そうとう近かったなぁ・・・。)
ロベルトにもっと近づきたい。
そう願ってから、その想いはかなってしまった。
叶ったというのに、その上自分はさらに上を望んでしまう。
もっともっと、近くになりたいと。
そこまで考えて、ロウはもう一度目を閉じた。
瞼ごしに、ロベルトの顔がみえている気がした。
息づかいが感じられるくらい、近かった。
ばちっ、と目をあける。
(今日は眠れそうにねぇな・・・。)
火照った頬を撫でる風がきもちいい。
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第1弾とか書きましたが2弾も書けたらいいなーっていう感じです。