幻水 ティアクライス小説2

たいした事じゃないけど
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城の中で、今一際うるさい場所


そこにロベルトと、ロウがいた。

何だよいつもの喧嘩か?

そう言って集まるものも少なくない。

実際は大した事での喧嘩でもなんでもないのだが。


「海だ。」

ロウがロベルトに一歩詰め寄る。

「山だ。」

負けじとロベルトがロウに一歩詰め寄った。

二人の距離は既に近すぎて、どれくらいこの繰り返しを行ったのか、一目で分かる。


「夏って言ったら海だろ海!? なんで山なんだよバカロベルト!!!」

「馬鹿なのはお前だろっ、何で暑いのにさらに暑いとこに行くんだよ!!!」


二人はそんな程度の事でよく言い合いをする。

喧嘩するほど仲がよいとはこのことだろうと、周りの誰しもが思っていた。


「どうしたんだ、ロベルト。ロウ殿も。」

「いつも元気だな、二人共。」


そこにやってきたのは、メルヴィスとクロデキルドだった。

ロウとロベルトが二人同時に、その方向を向く。

「「だってこいつが−−。」」

そうして二人の言葉が重なると、二人はまた睨みあった。


「いや、なんとなく何で喧嘩しているのかは予想はつくのだが。」

クロデキルドは笑いながら、そんな事を言っている。

周りの人からの視線は、早くこの二人を止めてくれと言っているのに、

クロデキルドはほとんど気にしていないようだった。

「あっ、もしかしてロベルト、泳げないんじゃ!?」

「馬鹿、そんなわけあるかっ!!」

「じゃぁなんでだよ!!」

さらに続く口げんかに、

「ロベルトは女性の水着姿を見てぶっ倒れた事があるからですよ。」

メルヴィスがさらりとそんな事を言った。

「な……、メルヴィス…!!!」

あまりにも唐突すぎて、ロベルトは怒るタイミングを逃した。

ロウはロウで、笑ってくれればまだましも、何か真剣に考え込んでいる。

「倒れたんじゃしょーがねぇか……?」

「ロウ、お前もまに受けるな!!!」

必死でごまかそうとするが、時すでに遅し。

「え、じゃあクロデキルド達の水着とかもやばいってこと?」

「だーかーらー、姫様の水着なんて見たって俺はなんとも………!!!」

ロウがそんな軽く言ってしまうものだから

つい、ロベルトも口が滑ってしまう。

辺りの空気が凍りつくのを、ロベルトは感じた。

「……ほう、私の水着姿など、見たくないと言うんだな、ロベルト?」

「あ、いえ、姫様、決してそういう事ではなくて、ですね…?」


時既に遅し。


「あー、俺余計な事言っちゃったかな、メルヴィス。」

「……今のはロウ殿が悪いかと。」

「だよなー…。でもまぁ、これで海だろ、海。」


クロデキルドに散々説教されて、うなだれて帰ってくるロベルトに、

ロウは嬉しそうに、海行きの決定を伝えたのだった。








ぷかぷかと海に浮ぶ浮き輪。

その中でロベルトは、ぐったりとしていた。

「暑い…ロウ、お前元気だな…。」

「何だよロベルト、泳がねぇの?」

「いや、さすがに俺だって泳ぎすぎて疲れたというか…。」


ロウと一緒にはしゃぎまくっていたら、かなりの体力を消耗してしまったのだ。

それでもまだ海に潜ったりしているロウの元気さといったら。


「まぁ……いいけど。」


ぼんやりとそれを眺めるのも、以外と楽しかった。

なにより、今はロウと二人きりだった。

他の皆は砂浜のほうでなにやら目隠しをして、騒いでいる。

あぁ、やっぱり姫様の水着姿が眩しい。


さすがにあの時のように倒れる事はなかったけれど。


同時に、今はロウの水着姿というのもやばかった。

なるべく他の奴らから遠ざけようと、ロベルトはロウを連れて遊びまわったのだ。


「はー……さすがに浮いてるの疲れた。ロベルト、ちょっと浮き輪入れろよ。」

「もうはいらないって…。」


ざぶ、と海に潜ったロウが、ロベルトの背中の辺りでもぞもぞしたかとおもうと、そのまま

「ぷはっ。」


無理矢理浮き輪に入り込んだ。

背中にロウの体温を感じる。


「な…、お前なぁ。」

「別にいいだろ、この浮き輪でっかいし!!」


そういう問題じゃないんだけど、とこいつに言っても無駄だろう。

そのまま暫く海に浮んでいると、後ろから寝息が聞こえてきた。


「おい…こんなところで寝るな。」

「んー…。なんかすげー気持ちよくって。」


眠たそうな眼を擦りながら、ロウが後ろから答えた。


あぁ、この状態で二人とも振り返ったら、結構ヤバイ体勢だよな、なんて思いながら。


「しょうがないな。そろそろ帰るか。」

「そうだなー。楽しかった。」


ロベルトは浮き輪から自分だけ抜け出し、ロベルトは浮き輪を引っ張って岸へと向かう。


「ロベルト。」

後ろからロウの声がするが、泳ぎながら振り向く事もできず、声だけで答えた。

「何だよ。」

「また来ようなー、へへへ。」


後ろを振り向いたらきっと。





その日、二人は日焼けしすぎて眠れなかった。











ロベ主アンソロ熱烈応援!
しかも勝手にひっそり応援!

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