幻水 ティアクライス小説2

星に願いを?
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夏が終って、だいぶ寒くなってきた夜の風が吹く。

ロウは屋上で風にあたっていた。

特に何を考えるでもなく、ただ、ぼーっと夜の星空を眺めていた。

この星のどこかに、俺と似た奴がいるんだろうかとか考えると

なぜか心が落ち着く気がした。

同時に、自分の父親と母親のことを考えて、少し胸がいたくなった。

記憶が全くといっていいほどないのに、事実そこに存在していたであろう人物。

俺の記憶にはなくても、この世界のどこかの誰かの記憶にはきっと残っているのだろう。


そのときに、俺も一瞬でいいから一緒にいただろうか。

親父やお袋と一緒に、俺がいたのを覚えていてくれるだろうか。


どうかその世界が滅びていませんように、と流れ星に願った。

一度だけ願った。早すぎていえないから。



「ロウ、ここにいたのか。」


後からロベルトの声がして、ロウはそちらを振り向いた。

急に声をかけるもんだから、自分はさぞかし驚いた顔をしていることだろう。


「なんだロベルトか。…ちょっと考え事してた。」

「まーたなんかネガティブになってるのか、お前らしくない。」

「そうかな。俺だってたまには落ち込む事くらいあるんだぜ。」


そう言って俺はロベルトを睨みつける。

それを笑顔で受け取りながら、ロベルトは俺の隣に座って空を見上げた。


「あぁ、今日は晴れてて星がよく見えるな。」

「…うん。」


二人でこうやって夜の空を見るのは、結構久し振りで。

なんだかずいぶんいい感じに思えたので、俺はロベルトの手をぎゅっと握った。


「な…、なんだよ、急に。」

「いいだろ、このくらい。」


別に今更だろ、もっと恥ずかしい事なんてたくさんしているんだから。

そう言うといつもロベルトはすぐ真っ赤になった。

それは今日も例外ではなくて。


「ば…、お前なぁ…。」


そう言ってロベルトは俯く。

俺はそれをみて笑った。

お前がいるだけで結構俺は楽しいし、幸せなんだぜ?これでも。


もう一度ぎゅっと手を握ると、今度はロベルトがそれを握り返してくる。

そして空の星に向かって言った。


「息子さんを俺にください!!!!」

「…っ、ロベルト…!?」


あまりにも急な行動に俺は椅子から思い切り立ち上がろうとして転びかけた。

それをぐいっと捕まえて、ロベルトは勝ち誇ったようににやりと笑った。


「聞こえたかな、お前の親に。」

「…あのなぁ、俺は、」

「聞こえたさ。きっと。」


その自身はどこからくるのか。

俺は口を紡ぐ。


「…聞こえたとしても、認めてくれるのか、俺男だぜ?」

「…さぁな。お前の親父なんて怒って殴りかかってきそうだもんな。」


会った事もないくせに。

けれど、きっとそうなのかもしれないとおもった。

会った事はないけれど、きっと。


「よし、これで晴れて認められたわけだな。」

「…そうだなぁ。」

「…キス、していいか?」

「……一々聞くなよ、馬鹿ロベルト。」


月の光が明るく屋上を照らす。

俺は目を閉じた。

やさしい口づけを感じながら、自分の幸せなどを噛み締めてみた。


…幸せなんだよなぁ、ほんとに、今。







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切ないの意味がちょっと違う方向にいきましたね…。まあいいか、うん。
うん、主人公可愛くしすぎな気がした。
あと下によく出てる広告パクリました(笑)セリフだけ。

だってだってー言わせてみたかったのー!!!

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