ペルソナ小説

□美味い。
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それは恋といえるのか。


奈々子が明日やっと退院できる。

嬉しさからか、いつもより半日も早く帰ってきた。

まぁ仕事もおちついてきたことだし、大丈夫だろう
一人、いや俺もいれて二人減ってしまって大変かもしれないが
そんなことは知らない

今は奈々子のほうが優先にきまっている。
そうだろう?


「ただいまー。」
飛鳥が帰って来た
ソファでうとうとしてしまったようだ。
久しぶりだ、あいつを俺が迎えるってのも。
「あぁ、お帰り。遅かったな・・・」
俺を見て飛鳥はちょっと驚いていたが
「・・・ただいま。」
そういってまた笑っている

こういうところは本当にかわいいと思う。

まぁ、なんだ。まだガキなんだし
かわいいと思っても不思議じゃないんじゃないかと
自分の焦りを押さえつける。
いや、本当は分かってるんだが。
「明日奈々子も退院だしね。早く帰ってくると思ってた。
 何時に帰ってきたんだ?」
「あぁ、15時頃だったかな・・・・」
「はやっ!! どんだけ楽しみなんだよ。小学生みたいだぞ・・・」

買い物でもしてきたのか、手にもった袋から冷蔵庫に食材を詰め込んでいる。
「飯・・・食べてないだろ?何食べたい?」
「あぁ、そうだな・・・・。何か肉が食べたい気分なんだが。」
「肉ねぇ・・・ハンバーグでも作るか・・・。」

あいかわらず器用なやつだ。

飛鳥はエプロンを引っ張りだしてきて、そのまま料理を作り始める。
あのエプロンも本当に似合うよなぁと思う。
もう本当にこの家の奥さんだなあいつも。

・・・俺の家内には悪いが、奈々子も飛鳥の事を母親のように思っているだろう
父親じゃないんだよな・・・・あいつの場合は。


料理を作っている間、俺は何も手伝う事がないので
しかたなくテレビをつけてタバコを取り出す。
タバコも明日で止めよう、奈々子が帰ってくる。

テレビでは他愛のない番組。
料理をする音
食欲をくすぐる香り。

まるであの頃にもどったような
そんな気がした。


「できた。ちょっと運ぶの手伝ってよ。」
キッチンから聞こえる声。
俺は立ち上がってキッチンに向かった
そして飛鳥の横に立って。

「・・・・うまそうだ。」
「誰が作ったと思ってるんだ。美味いにきまって・・・」
そういってこっちを向いた瞬間

「ん・・・・っ・・・」
甘い。
突然キスをしたせいか、飛鳥の目は大きく見開いて
その目の色に引き込まれるように
さらにキスを深くする
「はっ・・・・」
さすがに恥ずかしくなったか、苦しくなったのか
目をつぶって俺の肩に掴まってくる
そういう行動も何もかも愛しいと思えた

まぁずっとこうしているわけもいかないので
しかたがなく唇を離してやる。
飛鳥の顔は赤くなっていた。

「・・・・・っ・・・いきなり何しやがるこの馬鹿親父が!!!」
うつむきながらそうどなってくる
「・・・お前が可愛いから悪い。俺のせいじゃない。」
「・・・・っ・・!!!!」
「そういうところがまだガキなんだよ。年季が違うんだよ年季が。」

料理が冷めるだろ と怒り出した。
照れてやがる。

奈々子が帰ってきたらこんな事もできなくなるなぁ。




言うまでもないが、料理はかなり美味かった。

ついでに飛鳥も食ってしまおうか。

・・・・俺ももう親父だな。











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おいしく食べられたようです。

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