サイクル

□サイクル8
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ギュッ


「落ち着いて…。」

先ほどまでの責める口調が、今は殊更優しい声になっている。




女の子はこんな声に落ちるんだろうな






骸の広い胸はたくましさとあったかさと…どこか安心を与えてくれた。




こんなことされたの…

初めて






息が正常に戻ってくる。


「ハァハァハァハァ…ハァ…」









それを見届けた骸は柔らかい手つきで僕の背を撫でた。



等間隔で優しく叩く手が気持ちいい。


まるで






我が子を慰める母のような






でもさっきまでの汗がべっとり全身に残っていて気持ち悪い。




「能力は時として感情に左右されます。それは能力者の発展にも繋がるし、衰退にも繋がります。」



骸は僕の頬をやんわりと包み込む。
抵抗できなかったのは骸の表情が今にも壊れそうだったから。









「出会った時にも恭弥君は発作を起こしてました。」







なんで





なんで君が泣きそうなの?







「それは恭弥君の能力が衰退しているから。能力を使う度に恭弥君自身が傷ついてるから。」






能力は人を傷つけるものでしかないから







誰も僕を認めてくれなかった。








「辛い思いをしたのですね…」







この時の骸の顔を僕は忘れない。




言葉では僕を同情しているのに


顔は無理して作った訳でもなく




自然で




無垢で






僕に向けられたのは初めての顔。











笑顔だった。









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