サイクル

□サイクル6
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僕は今検査を受けている。

白衣の人間数人に囲まれたかと思えばこの始末。



最初は鉛筆を持ち上げろと言われ、真っ白なテーブルのど真ん中にある鉛筆を持ち上げた。


そしたら次はペンケースを

鞄を

机を

車を

人間を





僕の前に現れたものが次々に持ち上げられるのを見て、研究員たちは「はぁ」とか「ほぅ」とか感心しながら何かをメモしている。




まったく…僕をバカにしてるのか…?

今まで持ち上げられなかったものなんてなかった。
自分の能力にはそれなりに自信もあったし、それ相応の経験もある。

ただ一度だけ例外があったが…





それでもこの研究員たちは懲りずに次はこれと、さらに重いものをどんどん用意してくる。







「ねぇ。」

「はい?」

次のものを研究員たちが準備してる間に骸に聞いてみることにした。



「僕にこんなことさせて。あの人たちは何がしたいの?」


「クフ。能力抑制装置ですよ。」


「は?」


「能力の暴走を抑えるために機械を使って能力者の力を限定させる装置のことです。君にぴったりの装置を作り出すのに、君の能力を知る必要ががあるからこんなことをやってる
のですよ」




「へぇ。一般人様に危害を加える恐れがあるもんね、僕らは。」

一般人との垣根を減らすために「こっちは能力が使えません。だから安心してください」と言うための装置か。

皮肉たっぷりに言えば骸はため息混じりの苦笑をする。




「能力者も一般人もそんなに変わりませんよ。」


「へぇ…そう」


「そうです。」


「なら…こんなことしても?」




手をかざして準備中の研究員の一人を持ち上げ、そのまま叩き落とした。



バーンっっっ!!



突然の出来事に研究員どもはギャーギャー声をあげながら逃げ惑う。
恐怖と混乱とが入り交じった瞳で。









「見てよ。この能力が一般人様を苦しめてるよ。」


研究員たちの目は母のあの時の瞳そっくりだった。一瞬にして僕を息子として扱わなくなった母。




僕の中がどす黒くなっていく…



「一般人様は大怪我を負った人をおいて必死に逃げてるよ。いくら団結していても…いくら仕事を共にした仲間でも…自らの命のために簡単に捨てる。なんて滑稽なんだろう。」


「…」



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