幽☆遊☆白書の夢たち

□幽助
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++ せんせい 3 ++




「待て、待たんか! 幽助!!」


突然響いたバタバタと言う音と大声。ビックリした。廊下は走っちゃダメと注意しようにも、犯人は反対方向に行ってしまったみたいね。……それにしても、


「竹中先生、如何されたんです?」


廊下に取り残されている後ろ姿に声をかける。普段温厚な方なのに、こんなに声を荒げるなんて、きっと余程の事があったのね。

……あれ? そういえば、ユウスケ…って、まさか!

こちらを振り向いた先生の、その苦虫を噛み潰したような顔……やっぱり浦飯くんね!


「逃げられましたよ」

「……申し訳ありません…」

「いいえ、月先生が謝る必要はない。むしろ、あいつは先生が来てから丸く、楽しそうになりましたからね」


前は手がつけられないほど酷かったって…ええっ!? 今は、マシ……なの? あれで!?

竹中先生によると、どうやら殴り込んできた他校の生徒と喧嘩をすると言って学校から出て行ったらしい。
いくら殴り込んで来た他校の生徒の対応とはいえ、もちろん、そんなものサボって良い理由にはならない。

はぁ。
少し前進したと思った浦飯くん更生プロジェクトだけれど、これはまだまだ続きそうね。





戻った職員室で明日使うプリントをまとめていると、ざわざわという周りの声とともにガラリと窓が開いた音。

何かしら……って!!


「よ!」

「う、浦飯くん!? さっき喧嘩に行ったって…」


にこやかに挨拶している場合じゃないわよ!周りの先生方、完全に固まってるし……私まで悪目立ちしちゃってるんですけど!


「さっすが! よく知ってんじゃん。瑠璃センセー、俺に夢中だかんなぁ。愛してるぜ」


ざわりと、一気に視線が集まる。こ、こわいよ皆さん。いや、その前に浦飯くん!!


「何、誤解を招くような事言ってるの!」


ニヤニヤと楽しそうに笑うだけの浦飯くん。それが意味深みたいで先生達の視線が、さっきから痛すぎる!


「教師として、不良な生徒を放っておけないだけですっ!」

「あっそ」


本当にいつも突拍子もない事ばかり。心臓がいくつあっても足りないよ!
つまらなそうに相槌を打った浦飯くんのジト目を見たら、傷つけちゃったかなぁと突き放してしまった罪悪感にチクリと胸が痛んだ。
……大丈夫、よね?
いくら悪ふざけが過ぎたからって言い過ぎたかしら?
でも、どうしよう。恥ずかしくって目が見れない。


「……顔、真っ赤だぜ?」

「茶化さない!!」


心配する必要は全くないみたいね!
またからかわれてしまった。
しかも、先生方の視線が信じられないものでも見るみたいで凄く痛い。
もういっそここから立ち去ってしまおうか……って、あれ?
そういえば浦飯くん、何でここに……えっ!?


「……もしかして、怪我したの?」

「せーかい! つーわけでよ、保健室の鍵、貸してくれよ」


ふと気がついて真面目に話しかければ、左手をひらひらさせて笑っている浦飯くん。でも、よく見ればそこ以外にも小さな擦り傷が顔や耳や反対の手にも付いている。


「ちょ、ちょっとそこで待ってて!」


急いで棚に駆け寄ると中から保健室の鍵を取り出す。浦飯くんの怪我に意識が行って、先生方の視線はもう気にならなかった。


「なに、瑠璃チャン付いてきてくれんの? いやぁ俺って愛されてん」

「だぁーまらっしゃい!! 良い子だから、大人しくそこで待ってる事。良いわね!」

「お、おぉ」


流石に強く言ったからか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして素直に頷いた。
とにかく職員室中の好奇の視線から飛び出し、保健室へと浦飯くんを引っ張っていく。
何か言っていたけど、問答無用よ!







 ― to be continued―     





    


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